「働き方改革関連法案」が施行されました。

労働者が働きやすい環境を整備する働き方改革ですが、環境整備と同じくまたはそれ以上に考えなければならないのが人材確保です。

特にこれまで環境整備出来ていなかった事業者は、労働者に優しい環境を整備することが逆に、労働力の低下に繋がります。

さらに、日本の人口は2060年までに主に労働力として期待される生産年齢人口は45.9%減少するといわれています。

そこで政府が目を向けたのが有能な外国人労働者の雇い入れです。

2018年6月、安倍晋三首相は経済財政諮問会議で「2025年までに50万人超の外国人労働者の受け入れを目指す」と発表しました。現時点で外国人労働者受け入れ対象となっているのは、建設、農業、宿泊、介護、造船業の「5業種」のみですが、「飲食サービス業」も含む他14業種についても今後拡大していく方針となっています。

経営者の方から「外国人を採用するのは何かと大変そうだ」というご相談を受けます。

不安を抱える気持ちも分かります。どういった課題が考えられるのか、2回に分けてみていきます。

働く場として飲食業を選ぶ日本人が減っている

大前提として、これまでと同条件で日本人を雇うことは今後ますます難しくなります。これは理解しておいてください。

日本人は優秀な人材が多く、会社方針に理解があり、コミュニケーション能力が優れているわりに、比較的低い給与で雇うことが出来ていました。

しかし、最近の若い世代は働き方が多様化しています。自分の夢を追いかける人が増えて、飲食業という業種が選ばれにくくなってきています。時代の流れと共に職種が多様化し、飲食業以上に条件や環境が整った職業が増えたからです。仕事の選択肢の幅が広がったという現実があります。

上述した日本の労働人口減少もこれに追い打ちをかけます。

とはいえ、現実を理解しただけでは問題は解決しません。

以前にも述べた通り、この労働集約型のビジネスでは「人」こそすべてです。「人財」がいればビジネスを続けることができるし、問題の多くは人がいれば解決できることがほとんどです。

条件の良い日本人=雇用しにくい

この問題をすぐにでも解決してくれるのが外国人の採用です。

「外国人雇用=問題多い」ではない

「日本語が通じない」「文化や習慣が違うので受け入れられない」「扱いが難しい」「ビザ取得が困難」

これまでこういった外国人就労者への偏見や問題ばかりが取り沙汰されてきました。

確かに外国人就労者によるトラブルや事件が頻発したり、劣悪な環境で就労させられる外国人技能研修制度についても一部の心ない経営者による違法行為が報道されています。

外国人雇用=問題多い、といったイメージがすっかり定着してしまいました。

下記表中にも記載がある「資格外活動」と呼ばれる就労時間制限付き(週28時間以内などの条件付き)のアルバイト雇用と知りながら、時間超過させて就労させた飲食店経営者が摘発されるなどの事態にも発展しています。

こういったイメージから、外国人労働者を採用することに多くの不安を抱える経営者が少なくありません。

その気持ちも分かりますが、実はポイントさえ押さえれば、外国人雇用は何も難しいことはありません。

外国人はもともと優秀で、日本にも自国にも役に立ちたいという気持ちが大きいです。扱いが難しい日本人スタッフよりも、外国人スタッフの方が期待以上の仕事をこなしてくれることも少なくありません。

最初にして最大の難関はビザ取得でしょう。ビザ取得サポートを積極的に行う飲食店運営会社は多いです。ですが、なかなか簡単には取らせてくれません。

日本の飲食店で働きたい留学生や外国人は年々増えています。ビザ申請を行うことを条件にアルバイトスタッフとして入社してもらい、許可され次第社員へ登用するという方法もあります。平成30年12月には臨時国会において「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し公布されました。施行されれば大きな後押しとなるでしょう。

少しでも安く優秀な労働力を確保しながら事業を継続・拡大したいところです。留学生など外国人労働者の受け入れにも積極的に態勢を整えるとともに、法的な整備と後押しを日本政府には期待したいです。

外国人労働者の活躍はこれから著しくなります。不慣れな経営者にとっては、不安も多いでしょう。しかし、労働力が不足していく日本では、確実に見過ごすことの出来ない人たちなのです。

一方で、働き方改革関連法案の施行により、彼らの働き方にも変化が訪れると予想しています。

労働環境が整備されるので、働き方が多様化していきます。より好条件を目指しながら自社に留まりポジションを上げていく社員がいる一方で、転職の機会を増やしチャンスをうかがう人もますます多く出てくるでしょう。

従来の直接雇用にこだわらなければ、独立し「プロ店長・経営者」として企業と業務委託などの雇用契約とは違う形で役務を提供するという方法もますます増えてくるでしょう。いまや一般企業でプロ経営者は珍しくありません。飲食店経営においては「接客や提供のテクニック・知識」や「調理技術」に長けた人材だけが貴重なのではありません。むしろ総合的な能力、バランス感覚とコミュニケーション力を兼ね備えたプロフェッショナル経営者(プロ店長)こそがこれからの飲食業界にとってもっと重要になると感じます。

「働き方改革関連法案」は、働く人種、働き方、仕事との向き合い方、など様々な変化が期待できます。経営者の皆様には、そのなかで労働者に選ばれる勝ち組を目指していただきたいと思います。

後編では、外国人を採用後に気を付けるべきポイントを分かりやすく解説しています。すぐに実践できるので、是非お読みください。